て! そしてそれを自分の近くに寝かすなんて! まあ盗まれただけで済んだのが仕合わせというものだ! ほんとに考えてみると身震いがする!」
 兄と妹とが食卓から立ち上がろうとする時に、だれか戸をたたくものがあった。
「おはいりなさい。」と司教は言った。
 戸は開かれた。異様な荒々しい一群が入り口に現われた。そのうちの三人の者が一人の男の首筋をとらえていた。三人の者は憲兵で一人の男はジャン・ヴァルジャンであった。
 その一群を率いているらしい憲兵の班長が戸の近くに立っていた。彼ははいってきて、軍隊式の敬礼をしながら司教の方へ進んできた。
「閣下……」と彼は言った。
 その言葉に、黙り込んで悄然《しょうぜん》としていたジャン・ヴァルジャンは、あっけにとられた様子で頭をあげた。
「閣下!」と彼はつぶやいた。「ではこの人は司祭じゃないんだな……。」
「黙ってろ!」と一人の憲兵が言った。「この方は司教閣下だぞ。」
 その間にビヤンヴニュ閣下は、老年にもかかわらずできるだけ早く進み出てきた。
「ああよくきなすった!」と彼はジャン・ヴァルジャンを見ながら叫んだ。「私はあなたに会えて嬉しい。ところでどうし
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