人を愚昧《ぐまい》にするところのものを、最も多く含有するこの種の刑罰の特色は、一種の惘然《もうぜん》たる変容によってしだいに人を野獣に化せしむることである。時としては人を猛獣に化せしむる。ジャン・ヴァルジャンが相次いで行なった執拗《しつよう》な脱獄の計画は、人の魂の上に法律によってなされるその不思議な働きを証明するに十分であろう。ジャン・ヴァルジャンはもしその計画がまったく無益で愚であるとしても、機会のある限りはかならずそれを繰り返したであろう、そして彼はその結果については少しも考えず、また既になされた経験についても少しも考えなかったであろう。彼は檻《おり》の開かれてるのを見る狼《おおかみ》のようにただむやみと身をのがれようとした。本能は彼に言った、逃げよ! と。理性は彼に言ったであろう、止まれ! と。しかしながら、かく強烈な誘惑の前には理性は影を潜めてしまっていた。そこにはもはや本能しかなかったのである。ただ獣性のみが活《はたら》く。再び捕えられた時、新たに課せらるる苛酷《かこく》さはただ彼をますます荒ら立たせるのみであった。
 ここにもらしてはならぬ一事は、彼が強大な体力を有してい
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