る聖なる要素、善によって発展させられ煽《あお》られ点火され燃え立たせられ燦然《さんぜん》と輝かされるところのもの、悪によっても決して全く消さるることなきところのものが、すべての人の心のうちにないであろうか、そしてまた特にジャン・ヴァルジャンの心のうちにそれがなかったであろうか。
 それは重大にして困難な問題である。そしてこの終わりの問題に対しては、すべての生理学者はおそらく否[#「否」に傍点]と答えたであろう、ことにツーロンにおいて休息の時間にある彼を見たならば、躊躇《ちゅうちょ》するところなく否[#「否」に傍点]と答えたであろう。その休息の時間はジャン・ヴァルジャンにとっては夢想の時間であった。彼は両腕を組んで、轆轤《ろくろ》の柄に腰をかけ、地面に引きずらないように鎖の一端をポケットにねじ込んでいた。憤怒をもって人間をながめている法律によって賤民《せんみん》に落とされ、厳酷に天をながめている文明によってのろわれたるその囚人は、引きしまった顔をして沈鬱《ちんうつ》に黙然と考えにふけっているのであった。
 確かに、そしてわれわれもそれを隠そうとは思わないが、観察者たる生理学者はそこに医す
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