ていった。彼女は六時に印刷所にはいり学校は七時にしか始まらないので、子供は中庭で学校の始まるのを一時間待たなければならなかった。冬に戸外でまだ暗い夜の一時間である。印刷所では子供を内に入れなかった。子供は邪魔になるからだそうであった。朝職工たちは、その可憐《かれん》な小さな子供が眠そうに舗石《しきいし》の上にすわり、またしばしば自分の道具包みの上にちぢこまって薄暗い中に眠っているのを、通りがかりによく見かけた。雨が降る時などは、門番の婆さんが気の毒に思って、その小屋の中に入れてくれた。そこには一つの粗末な寝床と一つの糸取り車と二つの木の椅子とがあるきりだった。そして子供はそのすみの方で、なるべく寒くないように猫《ねこ》のそばに身を寄せて眠った。七時に学校が始まって子供はそこにはいってゆくのであった。ジャン・ヴァルジャンが聞いたのはそれだけのことだった。ある日彼はその話を聞かされたのだったが、それはほんの一瞬の間、電光の間にすぎなかった。愛する人たちの運命に関して突然一つの窓が開かれたのであるが、またそれはすっかり閉ざされてしまった。彼はもうその後は何も聞かなかった、永久に。彼らの消息は
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