その男はジャカン・ラバールの家に行って泊めてもらおうとしたが、宿屋では受け付けなかった。その男がガッサンディの大通りから町にはいってきて、薄暗がりの通りをうろついている所を、見かけた人がある。背嚢《はいのう》と繩《なわ》とを持ってる恐ろしい顔つきの男である。
「本当かね。」と司教は言った。
 司教がそのように問いかけたことにマグロアールは力を得た。彼女には司教がいくらか心配しているのだと思えた。彼女は勝誇ったように言い進んだ。
「本当ですとも。そのとおりでございますよ。今晩、町に何か不幸なことが起こります。皆そう申しております。その上に警察がいかにも手ぬかりなのです(彼女はうまくそのことをくり返したのである)。山国なのに、町には晩に燈火《あかり》もないのですから! 出かけるとします。暗やみばかりです。それで私は申すのです、そしてまた、お老嬢《じょう》さままで私のように申されて……。」
「私?」と妹はそれをさえぎった。「私は何も言いはしないよ。お兄様のなされることは皆いいのだからね。」
 マグロアールはその異議も聞かないがように言葉を続けた。
「私どもはこの家がごく無用心だと申すのです。
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