八〇六年式の型で、胴が短く、裾《すそ》が狭く、肩襞《かたひだ》のある袖で、ひもとボタンとがついていた。灰色の頭髪は小児の鬘[#「小児の鬘」に傍点]といわれる縮れた鬘《かずら》に隠されていた。マグロアールは怜悧《れいり》活発で善良な風をしていた。不ぞろいにもち上がった口の両端と下|脣《くちびる》より大きい上脣とは、いくらか気むずかしい勝気な風を示していた。閣下が黙っている間は、彼女は尊敬と気ままとの交じったきっぱりした調子で話しかけるが、閣下が一度口を開くと、前に言った通り、彼女はバティスティーヌ嬢と同様に穏かにその言に服するのであった。バティスティーヌ嬢の方は自分から口をきくことさえもなかった。彼女はただ彼の言うことを聞き、彼の気分をそこなうまいとするのみだった。若い時でさえ彼女はきれいではなかった。ばかに目につく大きな青い目ときわ立った長い鼻とを持っていた。しかしその全体の顔つきと全体の人柄とは、初めに言った通り、言うに言われぬ温良さを示していた。彼女はいつも温厚なるべく定められていた。
しかし信仰と慈悲と希望との三つの徳は、静かに人の魂を暖めるものであって、彼女においてもまた次第
前へ
次へ
全639ページ中154ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ユゴー ヴィクトル の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング