みすぼらしい風をした旅人はめったに見られなかった。それは中背の幅広い頑丈な元気盛りの男であった。四十六か七、八くらいであろう。皮の目庇《まびさし》のたれた帽子が、日に焼け風にさらされ汗の流れてる顔の一部を隠していた。黄色がかった粗末な布のシャツは、ただ首の所で銀の小さな止め金で止めてあるきりなので、そのすきから毛深い胸が見えていた。ネクタイは縒《よ》れてひものようになっている。青い綾織《あやお》りのズボンは傷《いた》んですり切れ、片|膝《ひざ》は白くなり、片膝には穴があいている。ぼろぼろな灰色の上衣には、撚《よ》り糸で縫われた青ラシャの補綴《はぎ》が一方の肱《ひじ》の所にあたっている。背中にはいっぱい物のはいった、堅く締め金をとめた、まだ新しい背嚢《はいのう》を負い、手には節《ふし》のあるごく大きな杖《つえ》を持ち、足には靴足袋《くつたび》もはかずに鉄鋲《てつびょう》を打った短靴を穿《うが》ち、頭は短く刈り込み、ひげを長くはやしている。
 汗、暑気、徒歩の旅、ほこり、それらのものが右の荒れすさんだ全体の姿に、更に何かしらきたならしい趣を加えていた。
 頭髪は短かったが、逆立っていた。も
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