つぐのうばかりである。彼らは何日間も男や女の後《あと》をつけてみたり、町角や木戸口に寒い雨の降る晩数時間立番をしてみたり、小僧に金を握らしたり、辻馬車屋や徒僕を煽《おだ》てたり、女中を買収したり、門番を取り入れたりする。それもなぜであるか。何の理由もない。ただ見たい知りたい探りたいがためのみである。ただ種々なことを言いふらしてみたいためのみである。そして往々にして、それらの秘密が知られ、それらの不思議が公にされ、それらの謎が白日の光に照らさるる時には、災難、決闘、失脚、家庭の没落、生涯の破滅などをきたし、それがまた、何らの利害関係もなく単なる本能から「すべてを発見した」彼らの大なる喜びとなるのである。まことに痛むべきことである。
ある人は単に噂をしたい心から悪者となることがある。彼らの会話、客間での世間話、控え室での饒舌《じょうぜつ》は、すみやかに薪《まき》を燃やしつくす炉のごときものである。彼らには多くの燃料がいる。そしてその燃料はすなわち近所の人々である。
かててファンティーヌは人から目をつけられた。
その上に、彼女の金髪と白い歯をうらやむ者も一人ならずいた。
ファンティーヌがしばしば人中でそっとわきを向いて涙をふくことが、工場の中で見て取られた。それは彼女が子供のことを、そしておそらくはまたかつて愛した男のことを、考えている時なのだった。
過去のわびしい絆《きずな》をたち切ることは、痛ましい仕事である。
ファンティーヌが少なくとも月に二回、いつも同じあて名で、配達料をも払って、手紙を出すということが確かになった。ついには、モンフェルメイュ旅館主テナルディエ様[#「モンフェルメイュ旅館主テナルディエ様」に傍点]というあて名まで知られてしまった。人々は酒場で代書人にしゃべらしたのだった。代書人は人のいい老人だったが、秘密の袋をあけないではいい酒で胃袋を満たすこともできなかったのである。要するに、人々はファンティーヌが子供を持ってることを知った。「どうしても普通の娘ではない。」ある一人の饒舌《じょうぜつ》な女は、モンフェルメイュまで出かけて行き、テナルディエ夫婦と話をして、帰ってきて言った。「三十五フラン使ってやっとわかった。子供も見てきました!」
そういうことをしたその饒舌家は、ヴィクチュルニヤンという恐ろしい女で、すべての人の徳操の番人で門番だった
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