きた。ところがイッシーでおもしろいことがあった。当時、陸軍御用商人ブウルガンの所有であったその公園ビヤン・ナシオナルは、偶然にもすっかり開かれていた。彼らは門をはいって、洞窟《どうくつ》の中のばかの隠者を見、有名な鏡の間の不思議な働きをためしに行った。そこはある半羊神が百万の富者になり卑しいチュルカレーがプリアプ神になったという話しにふさわしい、淫猥《いんわい》な陥穽《あな》だった。また彼らはベルニス修道院長が祝福した二本の栗《くり》の木にゆわえられてる、大きな綱のぶらんこを激しくゆすった。トロミエスが美人連を代わる代わるぶらんこにのせて揺すると、ちょうどグルーズの好んで画いた絵のようにその裾《すそ》がまくれるので、皆ははやし立てた。そしてツウルーズはスペインのトロサと関係があるので、ツウルーズ生まれで多少スペインと縁のあるトロミエスは、愁《うる》わしい調子で古いスペインの小唄《こうた》ガレガ[#「ガレガ」に傍点]を歌った、おそらく二本の木の間の綱の上に勢い込めて揺られてる美しい娘から感興を得たのであろう。

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わたしの生まれはバダホース。
恋というのがわたしの名。
わたしの心は
みんなわたしの目の中に、
ほんにかわいい
お前の足が出てるから。
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 ただファンティーヌだけはぶらんこに乗らなかった。
「あんなふうに気取ってるのはあたし大きらい。」とファヴォリットはかなり手酷《てひど》くつぶやいた。
 驢馬《ろば》をすてても、やはりまたおもしろかった。彼らは船でセーヌ河を渡り、パッシーから歩いてエトアール市門まで行った。読者は記憶しているであろうが、彼らは朝の五時から起き上がっていたのである。けれども、「なあに日曜には[#「日曜には」に傍点]疲《くたび》れることなんかないわ[#「ることなんかないわ」に傍点]、」とファヴォリットは言った、「日曜には疲れもお休みだわ[#「日曜には疲れもお休みだわ」に傍点]。」そして三時ごろに、楽しみに夢中になってる四組みの男女は、ロシアの山をかけおりた。ロシアの山というのは、当時ボージョンの高地に立っていた奇妙な建造物で、シャン・ゼリゼーの並み木の上にその波状をなした線が見えていたものである。
 時々ファヴォリットは叫んだ。
「そしてびっくりするようなものというのは! あたしそれを早く知りたい
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