の心を得たのだった。
 その若い男たちは仲間同士であり、その若い女たちも友だち同士であった。かかる恋愛はいつもかかる友誼《ゆうぎ》といっしょになるものである。
 賢いのと分別があるのとは別である。その証拠には、その貧しい乱れた生活をば斟酌《しんしゃく》してやるとすれば、ファヴォリットとゼフィーヌとダーリアとは分別のある女であった、そしてファンティーヌは賢い女であった。
 賢い? そしてトロミエスを思う? と人は反問するだろう。が、愛は知恵の一部なりとソロモンは答えるであろう。吾人はただこう言うに止めておこう、すなわち、ファンティーヌの愛は、最初の愛であり、唯一の愛であり、誠ある愛であったと。
 四人の女のうちで、唯一人の男からだけお前と呼ばれていたのは、彼女だけだった。
 ファンティーヌは、いわば民衆の奥底から花を開き出したともいえるような者の一人であった。社会の測るべからざる濃い闇《やみ》の底から出てきたので、彼女は額に無名および不明の印を押されていた。彼女はモントルイュ・スュール・メールで生まれた。どういう親からか? だれがそれを言い得よう。彼女の父も母も少しもわからなかった。彼女はファンティーヌという名だった。なぜファンティーヌというか? 他の名前がわからなかったからである。彼女の出生は、まだ執政内閣のある時分だった。彼女には姓もなかった、家族がなかったから。洗礼名もなかった。その地にはもう教会がなかったから。まだ小さい時に通りを跣足《はだし》で歩いていると、通りがかりの人がいい名だと言ってつけてくれた名をもらった。雨の降る時に雲から落ちてくる水のしたたりを額に受けるように、彼女はその名前をもらった。そして小さなファンティーヌと呼ばれた。だれも彼女のことをそれ以上に知ってる者はいなかった。この一個の人間はそのようにして人の世にやってきたのである。十歳の時に、ファンティーヌはその町を去って、近くの農家に雇われて行った。十五の時に、「金もうけに」パリーに出てきた。ファンティーヌはきれいであった、そしてできるだけ長く純潔を守っていた。美しい歯をしたかわいらしい金髪の娘だった。彼女は結婚財産として黄金《こがね》と真珠とを持っていたのである。しかし黄金というのは頭の上にあり、真珠というのは口の中にあるのだった。
 彼女は生活のために働いた。それから、やはり生活のために、
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