「もうどうか言わないでください。私は心が刺し通されるようなんです。どうしてあなたはそんな言い方をなさるんでしょう?」
「私が何かいけないことを申しましたか。」
「私を他の女と結婚させようなどと考えられるのは、私を少しも愛してくださらないからでしょう、まったく少しも。」
「いいえ、反対にあなたを愛してるからですわ。あなたを幸福にして上げるのがうれしいからです。」
「では、それがほんとうでしたら……。」
「いえいえ、そんなことに話をもどすのはよしましょう。きっとあなたの不幸になることですから。」
「私のほうは気にかけないでください。確かに私は幸福になるでしょうから。けれども、ほんとうのことを言ってください。あなたは私といっしょになって、不幸になるだろうと思っていられるのでしょう?」
「まあ、私が不幸になる、そんなことがあるものですか。私はあなたを尊敬していますし、たいへん敬服していますから、あなたといっしょになって不幸になるなどということはけっしてありません。……それに、なお申しますと、私はもう今ではどんなことがあっても、不幸になってしまうことはないように思われます。私はあまりいろんなこ
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