虫じゃありません。」とジョルジュは憤然と抗弁した。「私どものうちには一人も弱虫はいません。」
「自分を恐《こわ》がってるようじゃ弱虫に違いない。」とクリストフは言った。「なんだって、君たちは秩序を一つ求めていながら、それを自分たちだけで作り出すことはできないのか。昔のお祖母《ばあ》さんたちの裾《すそ》にすがりつきに行かなくちゃならないのか。どうだい、自分たちだけで歩いてみたまえ。」
「根を張らなくちゃいけないよ……。」とジョルジュは当時の俗謡の一節を得意げにあげた。
「根を張るためには、樹木はみな鉢《はち》に植えられる必要があるのかね? 皆のために大地があるじゃないか。大地に根をおろしたまえ。自分自身の掟《おきて》を見つけたまえ。それを自分自身のうちに捜したまえ。」
「私にはその隙《ひま》がないんです。」とジョルジュは言った。
「君は恐がってるんだ。」とクリストフは繰り返した。
 ジョルジュは言い逆らった。けれどもしまいには、自分の奥底をながめる気がないことを承認した。自分の奥底をながめて楽しみを得られるということがわからなかった。その暗い穴をのぞき込んでるとその中に落ち込むかもしれな
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