いてくれ、彼女らを男子と同等ならしむるものであります……。
もちろんそういう信念は、空想的でまた多少|滑稽《こっけい》なものです。しかし進歩というものは、人の希望するがようには実現されるものでありません。また希望しなくてはなおさら実現されるものでありません。この婦人たちの努力も無効ではないでしょう。それは彼女らを、かつての偉大な世紀におけるがように、より完全により人間的になすでしょう。彼女らはもはや世の中の生きた問題に無関心ではなくなるでしょう。生きた問題に無関心であることこそ、慨嘆すべき呪《のろ》わしいことです。なぜならば、家庭の義務にもっとも心を用いてる婦人でさえ、現代社会における義務を考える要はないと思うのは、許すべからざることですから。ジャンヌ・ダルクやカテリーナ・スフォルツァの時代の先祖たちは、そういうふうに思ってはしませんでした。その後婦人はいじけてしまったのです。われわれ男子は婦人に空気と日光とを分かち与えませんでした。それで婦人はわれわれからそれを強《し》いて取りもどそうとしています。実に健気《けなげ》な者ではありませんか!……もとより、今日戦ってる彼女らのうちの、多くの者は死ぬでしょうし、多くの者は迷うでしよう。危《あぶ》ない年齢期にあるのです。その努力はあまりに弱々しい力にとっては激しすぎます。植物でも長く水を得ないでいるときには、最初の雨に焼きつくされる恐れがあります。しかしそれがなんでしょう! 進歩の賠償なのですから。後から来る者たちは彼女らの苦しみから花を咲かすでしょう。現在戦っているこの憐《あわ》れな処女たちは、たいてい結婚なんかしないでしょうけれど、多くの子を生んだ過去の夫人たちよりも、未来にたいしてはいっそう多産でしょう。なぜなら、彼女らから、彼女らの犠牲によって、新たなクラシック時代の女性が出て来るでしょうから。
そういう勤勉な蜜蜂たちを見出す好機が得らるるのは、あなたの従姉のコレットの客間においてではありません。どうしてあなたは私を彼女のところへ強いて行かせようとなさるのですか。でも私はあなたの命に服さなければなりませんでした。それはありがたいことではありません。あなたは私にたいする権力を濫用なさるというものです。私は彼女の招待を三度断わりました。そのうち二度は返事も出しませんでした。すると彼女のほうから管絃楽の下稽古《したげ
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