野性の一部を瞥見《べっけん》してるばかりだった。少年の心の中に唸《うな》ってる濁った情熱の世界には、けっして気づかなかった。われわれ中流人は伝統的遺伝のためにあまりに賢くなっている。自分自身のうちを内省することさえなし得ないでいる。正直な男子がいだく夢想やあるいは貞節な女の体内に起こる欲望などを、その百分の一でも口にするならば、人は醜怪だと叫び出すかもしれない。それらの怪物はそっとしておくがよい。鉄格子で閉じこめておくがよい。しかしそれが存在してるということを知っていなければならないし、新しい魂のうちでは今にも飛び出そうとしてるということを知っていなければならない。――人が皆|挙《こぞ》って邪悪だと見なすようなあらゆる淫猥《いんわい》な欲望を、この少年はもっていた。それが突風のように不意にさっと起こってきて、彼をつかみ取った。それは彼が醜くて孤立してるだけになおさら熱烈だった。オリヴィエはそのことを少しも知らなかった。オリヴィエの前に出るとエマニュエルは恥ずかしかった。その平安の感染を受けた。そういう生活の実例は彼を馴養《じゅんよう》していった。彼はオリヴィエにたいして激しい情愛を感じ
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