彼に近づいていった。少しも叫び声を出さず、荒々しい言葉を少しも発せず、街頭の粗暴さからまったく離れたような、その黙々たる魂に、彼はひきつけられた。書物で、幾世紀もの魔法的な言葉で、いっぱいになってるその室から、ほとんど宗教的な尊敬の念を覚えさせられた。彼はオリヴィエの問いにたいして、傲慢《ごうまん》な粗野な気持をびくつかせながら、喜んで答えをした。しかし言い現わし方がうまくゆかなかった。オリヴィエはその朦朧《もうろう》とした言い渋りがちの魂を、注意深く解きほどいてやった。そして、世界の改造にたいする馬鹿げたしかも痛切な信仰を、彼はしだいに読みとることができた。その信仰は不可能事を夢みてるものであり人間を変えないものであるとわかってはいたが、彼はそれを笑いたくはなかった。キリスト教徒も不可能事を夢みたし、また人間を変えはしなかったのだ。ペリクレスの時代からファリエール氏の時代に至るまで、どこに精神上の進歩があるか?……しかしあらゆる信仰はみな美しい。他の信仰が薄らいでるおりには、現に輝き出してる信仰だけでも救うべきである。けっして信仰の多すぎるということはあり得ないだろう。オリヴィエは感
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