いう者一人に比べて、いかに多くの他の者が、裏切ったり倦《う》み疲れたりしたことだろう! 彼らは皆、当時のあらゆる党派の為政家らを呑噬《どんぜい》してる災厄の犠牲となっていた。その災厄というのは、女もしくは金による腐敗、女と金と――(この二つの災いは実は一体にすぎないのである)――による腐敗だった。政府党のうちにもまた反対党のうちにも、第一流の才能ある人々がいた。国家の大人物たる素質を有する人々がいた。――(他の時代だったら、彼らはおそらく国家の大人物となっていたろう。)――しかし彼らには信念もなく性格もなかった。享楽の要求と習慣と倦怠とに萎靡《いび》しきっていた。享楽のために彼らは、広大な計画のさなかで取り留めもない行ないをしたり、または突然に、やりかけの仕事や祖国や主旨をも投げ捨てて休息し楽しんでいた。彼らは戦闘において戦死をするくらいには勇敢だった。しかしながら、大袈裟《おおげさ》な空言を弄《ろう》せず、自分の位置で泰然と事務を執りつつ、舵《かじ》の柄《え》を握りしめて、死んでゆくことのできる者は、それらの首領のうちのきわめて少数にすぎなかった。
 そういう根深い弱点の意識のために
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