も、根底は少しもしっかりしていなくて、ひどく中流人的であった。種馬のいななくような笑いをするコカールは、太い声を出したり恐ろしい身振りをしたりしていたが、自分の言ってることを半分ばかりしか信じていなかった。彼は暴力の法螺吹《ほらふき》だった。中流人の卑怯《ひきょう》さを見通していて、実際以上に強がったふうをしながら、中流人を脅かす真似《まね》事をしていた。そしてクリストフにたいしては、笑いながらその事実を承認することを大して拒まなかった。グライヨーは万事を非議し、人がしたがってる万事を非議していた。何もかも画餅《がべい》だとしていた。ジューシエは常に肯定していた。けっして自分が誤りだとしたがらなかった。自分の議論の欠点をよく承知してはいたが、そのためにますます議論を力説するばかりだった。自分の主義の慢《ほこ》りさえ傷つかなければ、主旨の勝利なんかはどうでもよいとするかもしれなかった。しかし彼はよく、頑固《がんこ》な信念の発作から皮肉な悲観の発作へ移ることがあって、その悲観に沈むと、観念の虚偽やあらゆる努力の無益さを苦々しく批判していた。
 労働者らの大部分も同様だった。彼らはたちまちの
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