い。芸術家が生きることが問題である。芸術家に食べるものと平和に働けるものとを与えよ。富は余分なものであり、他人よりの窃盗である。露骨にこう言うべきだ、自分および家族の生活、自分の知力の正則な発達、それらに必要である以上のものを所有してる者はすべて、一の盗人であると。一方に過多の所有があれば、他方に過少の所有がある。フランスの無尽蔵の富、財産の豊富、などのことが話されるのを聞きながら、いかにわれわれは悲しげに微笑したことだろう。われわれ、勤勉な者、労働者、知的階級の者、男や女は、すでに幼年時代から、身を粉にして働きながら餓死しないだけのものを稼ぎ出さんとし、そしてしばしば、われわれの最善な人たちが労苦に斃《たお》れるのを見ているのだ――しかもそのわれわれこそ、国民のうちの生きた力である。しかし彼ら、世界の富をつめこんでる彼らは、われわれの苦痛や苦悶《くもん》について富んでると言うべきだ。だが彼らはそのために少しも心を乱されはしない。彼らはみずから心を安んずべき詭弁《きべん》を十分もち合わしている。所有の神聖なる権利、生存のための健全なる戦い、進歩[#「進歩」に傍点]という高遠な利害、その
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