のところ、その選択は現在では、一つの帝国主義と自由との間に存するのではなくて、一つの帝国主義と他の一つの帝国主義との間に存するのである。オリヴィエは言った。
「両方とも僕は取らない。僕は圧迫されてる人々の味方だ。」
 クリストフも同じく圧迫者らの横暴を憎んでいた。しかし彼は暴力の澪《みお》の中に巻き込まれ、反抗した労働軍のあとにつづいていた。
 彼はそれをみずからほとんど気づかなかった。彼は食卓の仲間らに向かって、自分は彼らといっしょではないと宣言していた。
「君たちにとって問題が物質的利害ばかりである間は、」と彼は言った、「君たちは僕の同感を得ないだろう。しかし君たちが一つの信念に向かって進み出すときには、僕は君たちの味方になるだろう。そうでなくて、ただ口腹の間だけでは、僕になんのなすべきことがあるものか。僕は芸術家だ。芸術を擁護するの義務をもっている。芸術をある一派にだけ奉仕さしてはいけないのだ。僕は知っている、近ごろ野心ある芸術家らが、不健全な評判を博そうと思って、一つの悪例を残した。しかし、そういうふうにして彼らが弁護してる主旨に、実際彼らが多く役だったろうとは、僕には思えない
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