せられた。「君たちは僕をどこへ連れて行くのか、」とは彼もあえて尋ね得なかった。しかし、自分の首の骨を折ることばかりを好んでいて、また同時に他人の首の骨をも折るようになるかもしれないことなどは気にもかけないでいる、それらの人々の傍若無人な様子を、彼は心の中でののしっていた。――でも、だれがいったい彼について来いと強《し》いたか? 彼らの仲間を脱するのは彼の自由ではなかったか。ただ彼には勇気が欠けていた。彼は一人きりでいるのが恐《こわ》かった。途上で後方に取り残されて泣き出す子供のようだった。彼も多くの人々と同様だった。多くの者は自分でなんらの意見ももたない。もしもってるとすれば、熱烈な意見にはことごとく不賛成であるということくらいなものである。しかし独立するには、一人きりでいなければならないだろう。そして幾何《いくばく》の人にそれができるか? 同じ時代の万人の上にのしかかってくる、ある種の偏見や仮定の束縛から脱するだけの胆力をもってる者が、もっとも聡明《そうめい》なる人といえども幾人あるであろうか? それは言わば、自己と他人との間に城壁を築くことである。一方には沙漠《さばく》の中の自由、
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