フはぞっとした。そしてあわただしく立ち去った。その言葉が火箭《かせん》のように彼を貫いたのだった。
彼は森の中にはいり込み、自分の家の方へ坂を上っていった。心乱れていたので道に迷った。樅《もみ》の大きな森のまん中に出た。影と静寂とばかりだった。赤茶色の日光の斑《はん》点が少しばかり、どこからともなくさしてきて、濃い影の中に落ちていた。クリストフはそれらの光の延板から昏迷《こんめい》された。周囲はすっかり闇夜のようだった。脹《ふく》れ上がった血管のように突起してる木の根につまずきながら、樅の針葉の落ち敷いてる上を歩いていった。樹木の根元には一本の草も苔《こけ》もなかった。枝葉の中には一声の鳥のさえずりもなかった。下のほうの細枝は枯れていた。生命はことごとく日の当たる上のほうへ逃げていた。少し行くと、その生命さえも消滅していた。クリストフはある不可思議な害悪に侵されてる部分にはいった。蜘蛛《くも》の糸のような長い細かな地衣科の苔類が、赤い樅の枝を網で包み込み、それを頭から足までからげ上げ、木から木へ移っていって、森全体を窒息さしていた。陰険な触手をもってる海底の藻《も》に似ていた。そして
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