、病的な激昂《げっこう》に陥っていたので、単に不確実を可能だと考えるだけにとどまらなくて、不確実を確実だとまで見なしたのだった。
 そのときから、彼女の決心は固められた。

 その日の晩――(謝肉祭肉食日の前の水曜日だった)――ブラウンは町から二十キロ離れた所に、診察に呼ばれていった。翌朝でなければ帰って来られなかった。アンナは夕食に降りて行かずに、自分の室に残った。誓っていた暗黙の約束を実行するのに、その夜を選んだのだった。けれども、クリストフへは何にも言わないで、一人で実行しようと決心した。彼女は彼を軽視していた。こう考えていた。
「あの人は約束した。けれど、あの人は男で、利己主義で嘘《うそ》つきで、自分の芸術をもっているし、すぐに忘れてしまったろう。」
 それにまたおそらく、温情なんかはなさそうに見える彼女の激烈な心の中にも、友にたいする憐れみの情を起こす余地があったであろう。ただ彼女はあまりに粗剛であまりに熱烈だったから、それをみずから認めていなかったのである。
 ベービは、奥様からよろしく言ってくれと頼まれたことだの、奥様が少し加減が悪くて休息したがってることだのを、クリスト
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