何事も彼には閉ざされてしまった。彼はその苛酷《かこく》な町から加えられる侮蔑《ぶべつ》にたいして、無駄《むだ》な憤慨ばかりして自身を害した。不節制と焦慮とに痛められた健康は、それをもちこたえることができなかった。彼は結婚後五か月にして卒中で死んだ。善良ではあるがしかし気弱で頭の貧しい細君は、結婚後一日として泣かずに暮らしたことはなかったが、夫の死後四か月たって、アンナをこの世に産み落としながら産褥《さんじょく》で死んだ。
 マルタンの母親はまだ生きていた。彼女は自分の息子《むすこ》にも、嫁と認めたがらなかったその女にも、彼らの死にぎわにさえ何一つ許さなかった。しかし嫁が亡くなったとき――天の返報が果たされたとき――彼女は子供を引き取って手もとに置いた。彼女は偏狭な信仰をもってる女だった。金持ちでかつ吝嗇《りんしょく》であって、その古い町の薄暗い通りに絹布の店を営んでいた。息子の児を、自分の孫としてよりもむしろ、慈悲心から拾い上げられた孤児であり、その代償として半ば召使たるべき者であるとして、取り扱った。それでも注意深い教育を授けてやった。しかし猜疑《さいぎ》的な厳格さを失わなかった。あ
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