少しも理解せず、あるいは曲解ばかりしてるくせに、それに熱中するような者が世にはたくさんある。――(しかし理解しなかったり曲解したりするからこそ、彼らはその作品を好むのである。)――クリストフはもう腹をたてなかった。彼はすでにこの世で多くの愚人らに出会っていた。しかしある滑稽《こっけい》な感激の声をきくと、彼はひきやめて、なんとも言わずに自分の室へ上がっていった。ブラウンもついにはその訳を知って、自分の考えはいっさい漏らさないことにした。そのうえ、音楽にたいする彼の嗜好《しこう》はすぐに飽満した。十五分とつづいて注意深く聴《き》くことができなかった。クリストフのほうを抛《ほう》っておいて、新聞を取り上げたりうとうとしたりした。アンナは室の奥にすわって、一言も口をきかなかった。膝《ひざ》の上に仕事を広げて働いてるふうだった。しかしその眼はすわっており手は動いていなかった。時とすると曲の半ばに音もなく出て行って、ふたたび姿を見せないこともあった。
かくして日々は過ぎていった。クリストフは力を回復した。ブラウンの鈍重ではあるがしかしやさしい親切、家の中の静穏、家庭生活の慰安的な整頓《せいと
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