ってくると二人はほっとした。医師はいつも上機嫌《じょうきげん》で、騒々しくて、せかせかして、俗っぽくて、好人物だった。盛んに食い飲み語り笑った。彼といっしょだとアンナも少し口をきいた。しかし二人の話はたいていいつも、食べてる料理のことや品物の価のことばかりだった。時とするとブラウンは、彼女の宗教上の仕事や牧師の説教などについて、彼女をからかって面白がった。すると彼女は固苦しい様子をし、食事が済むまでむっつり黙り込んだ。彼はまたしばしば往診の話をした。好んで嫌《いや》な患者のことを述べたて、あまり微細にしゃべりたてるので、クリストフは憤慨した。ナプキンを食卓に放り出し、嫌悪《けんお》の渋面をして立ち上がった。それがブラウンには面白かった。ブラウンはすぐに話しやめて、笑いながらなだめた。がそのつぎの食事のときにもまた話し出した。病気に関するそれらの冗談には、冷然たるアンナを歓《よろこ》ばせる力があるかのようだった。彼女は沈黙を破って、突然神経質に、何かしら動物的な笑いをたてるのだった。おそらく彼女は自分が笑ってる事柄にたいしては、クリストフに劣らぬ嫌悪《けんお》の情を覚えていたのであろう。
前へ 次へ
全367ページ中196ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング