る群集の身体から湧《わ》き出る悪臭に、胸が悪くなった。
「クリストフ!」と彼は懇願した。
 クリストフは耳に入れなかった。
「クリストフ!」
「え?」
「帰ろうよ。」
「恐いのか。」とクリストフは言った。
 彼は進みつづけた。オリヴィエは悲しげな微笑を浮かべてついていった。
 彼らから数列先の所、押し返された民衆が人垣を作ってる危険区域の中に、新聞|売捌所《うりさばきじょ》の屋根に上ってる佝僂《せむし》の少年の姿を、オリヴィエは認めた。少年は両手で屋根につかまり、危《あぶ》なげな様子でうずくまって、兵士らの壁の彼方《かなた》を笑いながら見渡し、そしてまた群集のほうへ、揚々たるふうで振り向いていた。彼はオリヴィエを見てとって、輝かしい眼つきを投げかけた。それからふたたび、彼方の広場のほうを窺《うかが》い始めた。何かを待ちながら希望に輝いた眼を見開いていた。……何を待っていたのか!――来るべきものをである……。ただに彼ばかりではなかった。彼の周囲の多くの者も、奇跡を待っていた。そしてオリヴィエはクリストフの顔を見ながら、クリストフもまた待ってるのを気づいた……。
 オリヴィエは少年を呼びか
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