。彼の頭は常に満たされていた。そして彼ほど充実してはいないが彼より思慮深かったオリヴィエは、幾度も彼に警告したことがあった。
「用心したまえ。君はあまり自分の力に信頼しすぎてる。がその力は谷川の水みたいなものだ。今日はいっぱいであるかと思うと、明日にも涸《か》れてしまうかも知れない。芸術家は自分の才能をうまく利用しなければいけない。それをむやみに消耗さしてはいけない。君の力に一定の道を作りたまえ。ある習慣、日々一定の時間に仕事をする摂生法、それに馴《な》れるようにしたまえ。そのことが芸術家にとって必要なのは、ちょうど軍隊式の動作や歩調が、戦闘する者にとって必要であるのと同じだ。危機がやってくると――(そして危機はいつでもやってくるものだ)――そういう鉄の鎧《よろい》が魂の没落を防いでくれる。僕はそのことを自分でよく知っている。僕が滅亡しなかったのは、そういう鎧に救われたからだ。」
 しかしクリストフは笑った。そして言った。
「君にはそれがいいかもしれないよ。しかし僕には生きる趣味を失うような危険はない。僕はあまりにりっぱな食欲をもってるのだ。」
 オリヴィエは肩をそびやかした。
「過多は過少を伴うものだ。あまりに丈夫な人ほど始末におえない病人はない。」
 そのオリヴィエの言葉が今や実証された。友が死んであとも、内生活の泉はすぐには涸れてしまわなかった。が妙に間歇《かんけつ》的となってきた。突然盛んに流れ出すかと思うと、つぎには地下に消えてしまった。クリストフはそれに気を止めなかった。そんなことはどうでもよかった。悲しみと新たな情熱とが彼の考えを奪っていた。――しかし、嵐《あらし》が過ぎ去った後、ふたたび泉を捜してその水を飲もうとしたとき、彼はもう何にも見出さなかった。まるで沙漠《さばく》だった。一筋の細流もなかった。魂が乾燥していた。彼はいたずらに、砂を掘ろうとし、地下の水脈から水を湧《わ》き出させようとし、いかにもして創作しようとした。しかし精神機能がそれに従わなかった。彼は習慣の助けを呼び出すことができなかった。習慣こそは忠実な味方であって、生の理由がことごとく逃げ去ったときにも、ただ一人しっかとわれわれのそばにとどまっていて、一言もいわず、一つの身振りもせず、眼をすえ口をつぐんではいるが、けっしておののかない確実な手で、われわれの手を取って危険な隘路《あいろ》
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