てはいないのだ。」とクリストフは言った。「それより他の人々のことを考えなければいけない。」
「だれのことを?……人生を包み隠す影となってる、あの凡俗な公衆のことをなの? あんな人たちのために演じたり書いたりし、あんな人たちのために一生を棒にふるなんて! まあなんという厭《いや》なことでしょう!」
「なあに、」とクリストフは言った、「彼らにたいしては僕も君と同じ考えだ。それでも別につまらない思いはしない。彼らは君が言うほど悪いものではない。」
「あなたはまったく楽観的ね。パングロス先生だわ。」
「彼らだって僕と同じく人間なんだ。どうして僕を理解しないということがあろう?――そして、たとい彼らが僕を理解してくれなくても、それで僕は絶望するものか。あれら無数の人々のうちには、僕と心を共にするような人が、常に一、二人はいるだろう。それで僕には十分だ。外界の空気を呼吸するには一つの軒窓で十分だ……。あの無邪気な観客たちのことを、若者たちのことを、誠実な年老いた魂たちのことを、考えてもみたまえ。彼らは君が示してやる悲壮な美に接すると、自分の凡庸な日々を超脱するじゃないか。また子供のおりの君自身を思
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