「明日《あした》になって疲れますよ。」
「私|馴《な》れていますの。でもあなたこそ……。明日のお仕事は?」
「明日は隙《ひま》です。十一時ごろちょっと稽古《けいこ》をしてやるだけで……。それに僕は丈夫です。」
「だからなおさらよく眠らなければいけないんでしょう。」
「そうです。僕はぐっすり眠りますよ。どんな苦しいことがあっても、眠られないということはありません。あまりよく眠るんで、時には癪《しゃく》にさわることさえあります。それだけ時間が無駄になりますからね……。一度睡眠に仕返しをして徹夜してやるのが、うれしくてたまらないんです。」
 二人は小声で話をつづけながら、ときどき長く黙り込んだ。そのうちにクリストフは眠った。フランソアーズは微笑《ほほえ》んで、彼が落ちないようにその頭をささえてやった……。窓ぎわにすわって薄暗い庭をながめながら、ぼんやり夢想にふけった。庭はやがて明るくなった。七時ごろに、彼女は静かにクリストフを起こして、別れの挨拶《あいさつ》を言った。

 その月のうちに、彼女はクリストフの不在中にやって来た。扉《とびら》は閉《し》め切ってあった。クリストフは彼女に部屋の
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