たれた。もし彼女がそのとき、それらの人々を威圧し復讐《ふくしゅう》するために、未来どんな者になるかを頭に置いていなかったとしたら、おそらくその夜中に死んでたかもしれなかった。
 彼女の計画は成り立った。役者たちが泊まってる劇場付旅館兼珈琲店[#「劇場付旅館兼珈琲店」に傍点]に、女中として住み込んだ。彼女はほとんど読み書きもできなかった。そして何にも読んだことがないし、読むべきものをもってもいなかった。彼女は学び知りたいと思って、異常な精力で勉強した。客人たちの室にある書物を盗み出した。蝋燭《ろうそく》を倹約するために、夜は月の光であるいは曙《あけぼの》の光で読んだ。役者たちはだらしがなかったので、彼女のそういう小さな盗みに気づかなかった。あるいはただぶつぶつ言うきりだった。それにまた彼女は、読んだあとで書物を返した――と言っても、そのまま返しはしなかった。気に入った部分は裂き取っておいた。その書物を返すときには注意して、寝床の下や家具の下に押し込んで、室からもち出されたのではないと思わせるようにしておいた。また彼女は、扉《とびら》に耳を押しあてて、台辞《せりふ》を繰り返してる役者たちに
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