員がせきたてていた。クリストフは先日のようなことを繰り返したくなかったので、他の車室を捜そうとした。彼女は彼に言った。
「お乗りなさい。」
 彼は乗り込んだ。彼女は言った。
「今日は構いませんわ。」
 二人は話をした。クリストフは大真面目《おおまじめ》になって説き示そうとした、他人に冷淡であるのは許すべからざることだとか、人は助け合い慰め合いながら相互にたいへんためになることをなし得るのだとか……。
「慰めですって、」と彼女は言った、「そんなことは私にはどうだってよござんすわ。」
 クリストフはなお言い張った。
「そうですわね、」と彼女は失敬な微笑を浮かべてなお言った、「慰め役はそれを演ずる者にとっては儲《もう》け役ですよ。」
 彼にはちょっとその意味がわからなかった。けれどようやく意味がわかって、彼女のことばかりを考えてるのに自分のためにしてるのだと疑われたことを思うと、彼はすぐに憤然と立ち上がり、扉《とびら》を開いて、汽車の進行中なのも構わずに出て行こうとした。彼女はやっとのことでそれを引き止めた。彼は怒りながら腰をおろし、扉を閉《し》めた。ちょうど汽車はトンネルにさしかかっていた
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