んらの努力もなしに働いた。彼女の一身は恋愛のために地上からもち上げられてるかのようだった。彼女はそれを自分では気づかなかった。屋根の上を歩く夢遊病者のように、自分の真面目《まじめ》な楽しい夢を、傍目《わきめ》もふらずに平然と追っかけていた……。
 やがて彼女は、その屋根に気づき始めた。それでも少しも不安を覚えなかった。でも屋根の上で何をしていたかをみずから怪しんで、家の中にはいった。すると仕事が厭《いや》になった。仕事のために愛が邪魔されてると思い込んだ。もちろんそれは彼女の愛がすでに弱ってきたからのことである。しかしそんな様子は少しも見えなかった。彼らはもう一瞬間も離れてることができなかった。世間との交渉を断ち、家の扉《とびら》を閉ざし、いかなる招待をも承諾しなかった。他人の愛情にも、自分らの仕事にも、たがいの愛から気をそらさせるすべてのことに、嫉妬《しっと》の念を覚えた。クリストフとの通信も間が遠くなった。ジャックリーヌはクリストフを好んでいなかった。彼女にとって彼は一つの敵であって、彼女があずかり知らぬオリヴィエの過去の一部を代表していた。そして彼がオリヴィエの生活のうちに場所を
前へ 次へ
全339ページ中116ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
ロラン ロマン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング