げ終わり]
を歌っていた。そして人類が、
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慴《おび》え吠《ほ》えつつ悲しげに訴えつつ
不毛の暗き畑中を回りに回る
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その一方に、また、幾百万の人々が、血にまみれた自由の破片を、懸命に争って奪い合ってる、その一方に、泉と森とはくり返し歌っていた。
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「自由よ!……自由よ!……聖なるかな、聖なるかな……。」
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けれどもそれらは、利己的な平安の夢に眠ってるのではなかった。詩人らの心の中には、悲壮な声が欠けてはいなかった。自負の声、愛の声、苦悶《くもん》の声、などが交じっていた。
それは
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猛《たけ》き力か深き柔和かを持てる
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酔い狂う※[#「風にょう+炎」、第4水準2−92−35]風《ひょうふう》であった。騒然たる武力であった。群集の熱を歌う人々の幻惑せる叙事詩であった。未来の都市[#「都市」に傍点]を鍛え出す、
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大なる火炉と巨《おおい》なる鉄敷《かなしき》との周囲
闇靄《やみもや》の中に浮かべる漆黒《しっこく》に光る顔、
つと伸び縮みする筋肉《にく》逞《たくま》しき背……
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などの人間神ら、息を切らしてる労働者ら、彼らの間における争闘であった。
それは、「知性の氷塊」の上に落ちかかる黒光りの明るみの中における、絶望的な狂喜をもってみずからおのれをさいなんでる、孤独な魂たちの悲壮な苦悶であった。
そういう理想主義者らの多くの特質は、一ドイツ人にとっては、フランス的というよりもいっそうドイツ的であるように思われた。しかしながら、だれも皆「フランスの微妙な説話」を愛していたし、ギリシャ神話の養液が彼らの詩のうちに流れていた。フランスの風景と日常の生活とは、ある人知れぬ魔力によって、彼らの瞳《ひとみ》の中ではアッチカの幻影となっていた。あたかもそれら二十世紀のフランス人らのうちに、古代の魂が残存してるかのようであり、その魂は美しい裸体にふたたびもどるため、近代の破れ衣を脱ぎ捨てたがってるかのようだった。
かかる詩の全体からは、ヨーロッパ以外ではどこにも見出し得られない、数世紀間に成熟した豊富な文明の香《かお》りが発散していた。一度|嗅《か》げばもはや忘れることの
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