、りっぱな思想を胸にいだき、日々の克己《こっき》をつとめてる――それこそ、フランスに常に存在していた小さな教会――数の上では小さいが魂から言えば偉大な教会であって、ほとんど世にも知られず表面に現われる働きもしないけれど、しかもフランスのすべての力なのだ。優秀者と自称してる者どもがたえず腐敗し更新してゆくに引き変え、その力のみは黙々として永続してるのだ……。幸福ならんがために、いかにもして幸福ならんがために、生きてるのではなくて、自分の信念を果たさんがために、もしくは信念に奉仕せんがために生きてる、一人のフランス人を見出したら、君は定めて驚くだろう。ところが実際、僕のような、そしてもっと価値があり、もっと敬虔《けいけん》であり、もっと謙譲である、たくさんの人々がいて、一つの理想に、応《こた》えもしない神に、死ぬるまで撓《たわ》むことなく奉仕してるのだ。倹約で几帳面《きちょうめん》で勤勉で平静で、心の底には炎が眠ってる、細民階級――貴族の利己心に対抗しておのが「国土」を守護した犠牲的な民衆、眼玉の青い老ヴォーヴァン、それを君は知らないのだ。君は民衆を知らず、真の優秀者を知らないのだ。われわれの忠実な友となりわれわれを支持する伴侶《はんりょ》となる書物を、君は一冊でも読んだことがあるのか。献身と信念とが豊かに注ぎ込まれてるわれわれの若い諸雑誌を、君はその存在だけでも知ってるのか。われわれの太陽となって、その無言の光は偽善者どもの軍勢を恐れさしてる、精神的偉人らを、君は少しでも知ってるのか。偽善者どもは正面から戦うことをなし得ないで、彼らの前に出ると、よりよく欺かんがために腰をかがめている。偽善者こそ奴隷であり、奴隷こそ主人である。君は奴隷だけを知っていて、主人を知らない……。君はわれわれの戦いを見ても、その意味を理解しないために、無茶な混乱だと思ってしまったのだ。君は影と光の反映とだけを見て、内部の光を、古来引きつづいてるわれわれの魂を、見てとっていないのだ。君はかつてわれわれの魂を知ろうとつとめたことがあるのか。十字軍から革命政府《コンミューン》にいたるまでのフランス人の勇敢な行為を瞥見《べっけん》したことがあるのか。フランス精神の悲劇を洞見《どうけん》したことがあるのか。パスカルの深淵《しんえん》をのぞき込んだことがあるか。十世紀以上の間活動し創造しつづけてきた民衆、
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