Bいずれの国においても善良な人々は、平和に暮らすことしか求めない。ことにドイツの善良な人々は、穏和であり懇篤であって、すべての人と仲よくしたがっており、他国人を攻撃するよりもむしろ、他国人を賞賛し模倣しがちである。しかし彼らはその意見を求めらるることもなく、また意見を述べるほど大胆でもない。世間的活動の雄々しい習慣をもっていない人々は、かならずや世間的活動の玩具《がんぐ》となされてしまう。彼らはりっぱなしかも愚かな反響となって、新聞紙の荒々しい叫声や首領の挑発を響き返し、それをもってマルセイエーズ[#「マルセイエーズ」に傍点]やラインの守り[#「ラインの守り」に傍点]を作り出すのである。
 それはクリストフとオリヴィエとにとっては恐ろしい打撃だった。二人は愛し合うことに馴《な》れきっていたので、なぜ両国も同様に愛し合わないかが考えられなくなっていた。長く残存していて今突然|眼覚《めざ》めてきたその敵意の理由が、彼らにはわからなかったし、ことにクリストフにはわからなかった。クリストフはドイツ人として、自国民が打ち負かした民族を恨む理由を少しももたなかった。同国人のある者らのたまらない傲慢《ごうまん》さをみずから不快に感じながらも、また、ブルンスウィック的なその強要にたいするフランス人の憤慨にある程度まで賛同しながらも、彼はフランスがどうしてドイツの同盟者になろうとしないかを、よく理解することができなかった。結合すべき理由の多くを、共通な思想の多くを、また共に完成すべき大なる仕事の多くを、両国はもってるように彼には思えたので、両国が無益な怨恨《えんこん》に固執してるのを見ると、不満を感ぜさせられた。すべてのドイツ人と同じく彼も、その不和についておもに罪があるのはフランスだと見なしていた。なぜなら、彼の考えによれば、敗北の思い出がいつまでも拭《ぬぐ》われないのは、フランスにとってつらいことであると認められはするものの、それは単に自尊心の事柄にすぎなくて、文化とフランス自身とのより高き利害の前には、当然消散すべきものであった。かつて彼はアルザス・ローレンの問題に考慮を向けたことがなかった。両州の併合は、数世紀間外国に付属した後にドイツの土地をドイツ祖国内に取りもどしたという、正当行為として考えるように、学校で教わってきたのだった。それで、自分の友がそれを罪悪だと見なしてるの
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