びる》の裂けたシャカバクや、おしゃべりの理髪師や、カスガールの小さな佝僂《せむし》などを、たしかに知ってる気がしたし、また、宝捜しの男の魔法の木の根をくわえてる黒い啄木鳥《きつつき》を、田舎《いなか》に散歩しながら見出そうとつとめていた。そしてまた、カナーンの地や約束の土地などは、彼の幼い想像力によって、ブールゴーニュやベリーの地方と一つになっていた。色|褪《あ》せた古い羽飾りのように小さな木が一本頂に立っている、向こうの丸い丘は、アブラハムが火烙《ひあぶり》台を立てた山のように思われた。茅屋《ぼうおく》のほとりにある大きな枯れた叢《くさむら》は、長い年代のために消えてしまってる燃ゆる[#「燃ゆる」に傍点]荊《いばら》であった。少し大きくなって、批判力が眼覚《めざ》めかけたころでさえ彼は、信仰を飾る通俗な伝説に心を向けるのが好きだった。それが非常に楽しかったので、まったくだまされはしなかったがだまされるのが面白かった。かくて彼は長い間、聖土曜日には、復活祭の鐘の帰来を待ち受けた。その鐘は、この前の木曜日にローマへ出かけたのであって、小さな吹き流しをつけて空中をもどってくるはずだった。そ
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