であり、音楽と職業とだけでみずから養ってる音楽であった。しかるにクリストフは、真偽はともかくとして、フランスの音楽ほど他物の支持を必要としてる音楽は他にない、というような印象を受けた。他物にからんで伸びるこのしなやかな植物は、支柱なしに済ますことができなかった。すなわち文学なしに済ますことができなかった。自分自身のうちに十分の生活理由を見出していなかった。息が短く、血が少なく、意志がなかった。男子の手を待ってる弱り果てた女のようだった。しかし繊細な貧血的な身体をし宝石を飾りたててるこのビザンチンの皇后は、軽薄才子、美学者、批評家、などという多くの宦官《かんがん》にとり巻かれていた。ただ国民が音楽に通じていなかった。ワグナーやベートーヴェンやバッハやドビュッシーなどのために、二十年来騒々しく発せられていた熱狂の叫びも、一つの階級以外にはほとんど伝わっていなかった。音楽会の増加も、すべてを押し流す潮のような音楽熱も、公衆の趣味の実際の発達とはなんらの呼応がなかった。ただ選ばれたる人々にのみ触れて彼らを惑乱さしてる、過度の流行にすぎなかった。音楽はある一握りの人々からしかほんとうには愛されて
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