》持ちをして、幾何《いくばく》の金をもらってるかを――(もちろんまったくの中傷ではあろうが)――話し合った。その批評家は正直者であった。一度約束をするとそれを忠実に果たした。しかしその大なる手腕は――(彼らの言うところによれば)――幾度も初回興行があるように、上演作をできるだけ早くやめさせるような讃《ほ》め方をすることであった。その話《コント》――(もしくは金額《コント》)――に皆大笑いをしたが、だれも驚く者はなかった。
そういう話の間々に彼らは、たいそうな言葉を口にしていた。「詩」のことを話したり、「|芸術のための芸術《ラール・プール・ラール》」の話をしていた。騒がしい収入問題の中ではそれが、「|金銭のための芸術《ラール・プール・ラルジャン》」と響いていた。クリストフは、フランス文学の中に新しくはいってきたこの周旋人的な風習に、不快の念を覚えた。彼は少しも金銭問題がわからなかったので、議論を傾聴するのをやめてしまった。その時、彼らは文学談を、――あるいはむしろ文学者談を――始めた。そしてヴィクトル・ユーゴーの名前が聞こえたので、クリストフは耳をそばだてた。
それは、ユーゴーがその夫人から欺かれたかどうかの問題だった。彼らは長々と、サント・ブーヴとユーゴー夫人との恋愛を論じ合った。そのあとで彼らは、ジョルジュ・サンドの多くの情夫やその価値の比較を語りだした。それは当時の文学批評界の大問題だった。偉大な人々の家宅探索をし、その戸棚《とだな》を検査し、引き出しの底を探り、箪笥《たんす》をぶちまけた後、批評界はその寝所をまでのぞき込んだ。国王とモンテスパン夫人との寝台の下に腹匐《はらば》いになったローザン氏の姿勢は、ちょうど批評界が歴史と真実とを崇《たっと》んで取ってる姿勢と同じだった。――(当時人々は皆、真実を崇拝していた。)――クリストフの同席者らは、真実の崇拝にとらえられてることをよく示した。この真実の探求においては、彼らは疲れを知らなかった。彼らは過去の芸術にたいすると同じく、現在の芸術にたいしてもそれを試みていた。そして正確さにたいする同じ熱情をもって、最も顕著な現代人の私生活を分析した。普通だれからも知られないようなごく細かな情景にまで、彼らは不思議なほど通じていた。あたかもその当事者らが率先して、真実にたいする奉仕の念から、正確な消息を世間に提供してるか
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