にしてるし、利己的なことばかり考えながら理想主義者だと自信している。しかし君らはさらにひどい。芸術と美と(大袈裟《おおげさ》に祭り上げた芸術と美と)の名のもとに、国民的|淫佚《いんいつ》を覆《おお》い隠している――しかも一方には、真理だの科学だの知的義務などの名のもとに、道徳的ピラト主義を押し隠しもしないくせに。君らの真理や科学や知的義務などは、そのいかめしい探究の可能的結果については、口をぬぐって関せず焉《えん》としている。芸術のための芸術だって!……なるほどりっぱな信念だ。しかしそれは強者のみの信念だ。芸術! それは鷲《わし》が餌食《えじき》をつかむように、人生をつかみ取り、それを空中に運び去り、それとともに清朗な空間に上昇することだ。……そのためには、爪《つめ》と大きな翼と力強い心とが必要だ。しかし君らは小雀《こすずめ》にすぎない。一片の腐肉を見出すと、即座にそれをつっついて、ちゅうちゅう鳴きながら争っている……、芸術のための芸術だって!……災なるかなだ。芸術というものは、いかなる賤《いや》しい風来人にも渡される賤しい餌《えさ》ではない。確かに一つの享楽であり、最も人を陶酔させる享楽ではある。しかしながら、激しい闘《たたか》いによってのみ得られる享楽であり、力の勝利を冠する月桂樹《げっけいじゅ》である。芸術とは、征服せられたる人生なのだ。人生の帝王なのだ。シーザーになりたくば、シーザーの魂をもたなければならない。君らは芝居の上の王様にすぎない。君らはただ役割だけを演じている。役割を信じてさえもいない。そして、自分の畸形《きけい》を誇る役者のように、君らは君らの畸形で文学を作っている。自国民のあらゆる病気、努力の恐れ、快楽の嗜好《しこう》、肉感的な観念、空想的な人道主義、意志を快く麻痺《まひ》させて、あらゆる活動の理由を奪い去るもの、そういうものを大事に育て上げている。阿片《あへん》喫煙所へばかり案内したがっている。そして君らはよく知っていながら、決して口には言わない、最後には死が控えていることを。――そこで僕が言ってやろう、死が存在するところには芸術は存在しないと。芸術、それは人を生きさせるものだ。しかし君らの著作者は、最も正直な者でさえも、いかにも卑怯《ひきょう》で、蔽眼布《めかくし》が眼から落ちた時でさえ、見えないふうを装《よそお》っている。彼らは厚かまし
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