そしてクリストフは何にも知らないくせに、信頼の心からそれにいっしょになっていた。
彼にとっては、リーリ・ラインハルトの記憶よりもなお貴《とうと》いものは、彼女の書物だった。彼女はフランスの書物で小さな文庫をこしらえていた。手当たり次第に買われた、学校の教科書や小説や脚本などがあった。フランスのことを知りたがっていながら何にも知っていないクリストフにとっては、ラインハルトが親切にも彼の勝手に任してくれる時には、それらの書物が宝のように思われた。
彼はまず、学校用の古い編纂《へんさん》書から、抜粋文集から、読み始めた。それはリーリ・ラインハルトやその良人にとって、学生時代に役だったものであった。まったく何も知らないフランス文学のうちに分け入ろうとするならば、まずそれから始めなければいけないと、ラインハルトは彼に確言した。クリストフはフランス文学を自分よりよく知ってる人たちをごく尊敬して、その言葉どおり正直に従った。そしてその晩から読み始めた。彼はまず、自分のもってる宝の概略を調べ上げようとつとめた。
彼は次のようなフランスの作家を知った。テオドール・アンリ・バロー、フランソア・ペティ
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