格ではなかった。彼らが渋滞するのに同情を寄せなかった。ただちに音楽の理論を説明してやろうとした。ピアノの稽古《けいこ》を授ける時には、ベートーヴェンの交響曲《シンフォニー》を生徒に課して、それを生徒といっしょに連弾した。もとよりそんなことがやれるはずはなかった。彼は腹をたてて、生徒をピアノから追いのけ、その代わりに一人で長々とひいた。――学校以外の個人の弟子にたいしても、同様であった。彼には少しの我慢もなかった。たとえば、貴族たることを自負しているかわいい令嬢に向かって、女中のようなひき方をすると言ったり、あるいはまた、母親へ手紙を書いて、もう教えるのはごめんだと言い、こういう無能な者にこのうえ関《かかわ》り合っていなければならないとしたら、寿命が縮まるばかりだと言った。――そんなふうなのでうまくゆかなかった。わずかな弟子も離れていった。一人の弟子を二か月以上も引き止めることはできなかった。母は彼に意見を加えた。就職した学校とだけはせめて喧嘩《けんか》をしないと、彼に約束さした。なぜなら、もしその地位を失うようなことがあったら、もはや生活の道がわからなくなるからだった。それで彼は厭《い
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