であった。彼女の容色さえも――その身振り、動作、顔立ち、唇《くちびる》の皺《しわ》、眼、手、上品な痩《や》せ方、――皆理知の反映であった。身体は理知によって形付けられていた。理知がなかったら、彼女は醜いと見えるかもしれなかった。そしてこの理知が、クリストフの心を歓《よろこ》ばせた。彼は彼女を実際以上に広濶《こうかつ》自由であると思った。彼女のうちに案外なものがあるのを知らなかった。彼は彼女に心をうち明け、自分の考えを彼女に分かちたいという、熱烈な欲求を感じた。彼はまだかつて、自分のことを本気に聞いてくれる者を見出さなかった。そして今、一人の女友だちに出会うのはなんたる喜びだったろう! 姉妹がないことは、幼年時代の遺憾の一つだった。姉妹が一人あったら、兄弟よりもずっとよく自分を理解してくれるだろうと、彼には思われた。ユーディットに会った後彼は、親愛なる友情にたいするそのむなしい希望がよみがえってくるのを感じた。彼は恋愛のことは考えなかった。恋していなかったので、恋愛は友情に比べるとつまらないもののように思われた。
 ユーディットは間もなく、右の微妙な点を感じた。そしてそれに気を悪くした。
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