な役目を誇りげに愉快に吠《ほ》えていた。そういう喧騒《けんそう》の中に、クリストフはかのレベッカを認めた。――そのほんとうの名はロールヘンというのだった。――彼女は金髪の後部に、白と青とのキャベツの葉を一枚さしていた。それがちょうど歯形に切り刻んだ帽子のようになっていた。彼女は籠の上に腰をかけ、黄色いたまねぎや小さな薄赤い蕪菁《かぶら》や青いいんげん豆や真赤《まっか》な林檎《りんご》などの山を前にし、売ろうともしないで林檎をかじっていた。彼女は食べてやめなかった。時々、前掛で頤《あご》や首をふき、腕で髪の毛をかき上げ、頬《ほお》を肩にこすりつけ、または手の甲で鼻をこすっていた。あるいは両手を膝の上に置いて、一握りのえんどうを際限もなく手から手へ移していた。そして閑散な様子で、左右をながめていた。しかし身のまわりで起こることは少しも見落とさなかった。気がつかないふりをしながらも、自分の方へ向けられてる眼つきを見て取っていた。彼女は完全にクリストフを認めた。買い手たちと話しながら、その頭越しに、眉根《まゆね》をよせて自分の賛美者を観察していた。彼女は法王のように威儀堂々としていた。しかし心のうちではクリストフを嘲《あざけ》っていた。彼は嘲られるに相当していた。数歩向こうにつっ立って、彼女を貪《むさぼ》るように見つめていたのである。それから彼は、言葉をかけずに立ち去った。
その後彼は何度か、彼女の村のまわりをさまよった。彼女はよく農家の中庭を行き来していた。彼は往来に立ち止まって彼女をながめた。彼女のためにやって来たのだとは自認していなかった。そして実際、そんなことはほとんど考えていなかった。彼はある作曲に没頭すると、夢遊病者みたいな状態になるのだった。意識的な魂が音楽的思想を追い求めている一方に、一身の他の部分は無意識的なも一つの魂のものとなり、その魂はわずかな放心の隙《すき》をもうかがって自由の天地にのがれようとしていた。彼はしばしば、彼女の正面にいる時でも、自分の音楽の囁《ささや》きに気を取られていた。そして彼女をながめながら夢想しつづけていた。彼は彼女を愛してるとは言い得なかった。そんなことは考えてもいなかった。彼女を見るのが楽しい、ただそれだけだった。自分を彼女の方へ導いてゆく欲望には、みずから気づいていなかった。
そういう執拗《しつよう》なやり方は、噂《う
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