男は、生涯《しょうがい》かつて大して気をもんだことがなかった。けれども、シュルツのもたらした報知には彼も平然たることを得なかった。彼はその短い腕とランプとを動かしながら尋ねた。
「なに、ほんとうかい? 来るのかい?」
「明日の朝だ。」とシュルツは電報をうち振りながら揚々とくり返した。
二人の老友は青葉|棚《だな》の下のベンチへ行ってすわった。シュルツはランプを取った。クンツはていねいに電報を開き、半ば口の中でゆっくり読んだ。シュルツは彼の肩越しに声高く読み返した。クンツはなお、電文のまわりの指示欄や、発送された時間や、到着した時間や、語数などをながめた。それからその貴い紙片を、快げに笑ってるシュルツに返し、うなずきながら彼をながめて、くり返した。
「ああよろしい……よろしい!……」
そしてちょっと考え、煙草《たばこ》を一口大きく吸い込んで吐き出した後、シュルツの膝《ひざ》に手を置いて言った。
「ポットペチミットに知らせなけりゃいけない。」
「己《おれ》が行こう。」とシュルツは言った。
「己もいっしょに行こう。」とクンツは言った。
彼はランプを置きに家へはいり、またすぐに出て来た。二人の老人はたがいに腕を組み合わして出かけた。ポットペチミットは反対の村はずれに住んでいた。シュルツとクンツとは、報知を心の中でくり返し考えながら、上《うわ》の空の言葉をかわしていた。突然クンツは立ち止まって、杖《つえ》で地面をたたいた。
「やあしまった!」と彼は言った、「家にはいない……。」
ポットペチミットがその午後、ある手術のために隣り町へ出かけて、そこで泊まり、なお一両日滞在するはずであることを、彼は思い出したのだった。シュルツは途方にくれた。クンツもやはり弱った。彼らはポットペチミットを自慢にしていた。彼の手腕を看板にしたかった。二人はどうしていいかわからないで、道のまん中に立ち止まった。
「どうしよう、どうしよう?」とクンツは尋ねた。
「ぜひともクラフトにポットペチミットの声を聞かせなけりゃいけない。」とシュルツは言った。
彼は考えてから言った。
「電報をうとう。」
二人は電信局へ行って、何事だか少しもわからないような、感動した長い電文をいっしょにつづった。
それからもどっていった。シュルツは時間をくっていた。
「一番列車に乗ったら、明日の朝は帰って来れるだろう。」
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