て、学生らの上に愛情の欲求を移していた。しかし報いられることはまれだった。年老いた心は、若い心にごく近く自分を感じ、ほとんど同年輩くらいに感じ得る。両者を隔てる年月がいかに短いかを知っている。しかし青年はそれを少しも気づかない。青年にとっては、老人は異なった時代の人である。そのうえ、青年は目前の配慮にあまりに心を奪われていて、自分の努力の悲しい終局からは本能的に眼をそらすのである。シュルツ老人は、ある学生らの感謝に時々出会うこともないではなかった。幸でも不幸でも彼らに起こることにはすべて彼が新鋭な関心を見せるので、彼らはそれに動かされた。時々会いに来てくれた。大学を出ると感謝の手紙をよこした。なお引きつづいて年に一、二回手紙をくれる者もあった。けれどその後になると、シュルツ老人はもう彼らの消息に接しなかった。ただ新聞などで某々の出世を知った。すると彼は自分が成功でもしたかのようにその成功を喜んだ。彼は彼らの無音を恨まなかった。いろんな理由を察しやっていた。彼らの愛情を少しも疑わなかった。彼らにたいする自分の感情と同じような感情が、彼らのうちの最も利己的な者にもあるがように思っていた。
しかし書物こそは、彼にとって最上の慰安所であった。書物は決して彼を忘れることなく欺くことがなかった。彼が書物の中でいつくしんだ多くの魂は、今はもう時《タイム》の波を超越していた。その魂らは愛のうちに永久の確固不動さを保っていた。しかもその愛たるや、彼らが人の心のうちに喚《よ》び起こしかつみずからも感じてるらしいものであって、彼らを愛する人々の上に彼らが光り輝かしてくれるものであった。美学と音楽史との教授である彼は、小鳥の歌にそよいでる古い林に似ていた。それらの歌のあるものはごく遠くに響いていた。幾世紀もの彼方《かなた》から来るものだった。それでも十分にやさしく神秘的であった。また彼にとって耳|馴《な》れた親しい歌もあった。それらは親愛な道づれであった。それらの文句のおのおのは、過去の生涯の喜びや悲しみを思い起こさしてくれた。過去の生涯といっても、意識してるものも意識しないものもあった。(なぜなら、太陽の光に照らされるおのおのの日の下には、他の日々が展開していて、それを見知らぬ光が照らすのだから。)また最後には、欲求して長い間待ち望んでる事柄を言ってくれる、まだかつて聞いたこともない歌
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