ない意味を帯びるのであった。それから終わりにはきっと、高尚なるドイツ国民をほめ上げるきまり文句がやって来た――道徳的国民(この点においてドイツ国民は他のあらゆる国民より秀でている[#「この点においてドイツ国民は他のあらゆる国民より秀でている」に傍点]とヘルデルが言った)――忠実なる国民(この忠実[#「忠実」に傍点]とは、真面目、忠実、公平、正直《せいちょく》、などのあらゆる意味をもっていた)――フィヒテが言ったように、優秀なる国民――あらゆる正理と真理との象徴たる、ドイツの力――ドイツの思想――ドイツ魂《ゲムユート》――ドイツ民族それ自身と同じく、唯一の独特なる言葉であり純粋なまま保存されてる唯一の言葉である。ドイツ語――ドイツの婦人、ドイツの酒、ドイツの歌……「ドイツ[#「ドイツ」に傍点]、世界においてすべてより卓越せるドイツ[#「世界においてすべてより卓越せるドイツ」に傍点]!」
クリストフは抗弁した。ラインハルト夫人は叫び出した。三人とも声高く言い合った。しかしよく理解し合っていた。自分らは善良なドイツ人であることを、三人ともよく知っていた。
クリストフはしばしばやって来て、この新しい友人らとともに話をし食事をし散歩をした。リーリ・ラインハルトは彼をひいきにして、滋味ある御馳走《ごちそう》をふるまってやった。彼女は自分自身の健啖《けんたん》を満足させるために、かかる口実を見出したことを喜んでいた。彼女は感情上のまた料理上の種々な注意を凝らしていた。クリストフの誕生日には、大きな蒸し菓子をこしらえ、その上にたくさんの蝋燭《ろうそく》を立て、まん中にはギリシャ風の服装をした小さな砂糖人形をすえた。この人形はイフィゲニアを現わしたつもりで、花輪を一つもっていた。クリストフはドイツ人たることをきらいながら根本からドイツ人だったので、真の情愛を示すあまり上品でないそういう仕方にも、たいへん心を打たれた。
気質《きだて》のよいラインハルト夫妻は、自分らの積極的な友情を示すために、もっと微妙な方法を見出すことができた。楽譜をほとんど読んだことのないラインハルトは、細君に説き勧められて、クリストフの歌曲集[#「歌曲集」に傍点]を二十部ばかり買った。――(発行書店から買い出されたのはそれが最初のものだった。)――ラインハルトはそれを諸方の大学関係の知人に送って、ドイツじゅ
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