れを見て彼女は、彼を野蛮なチュートン人だとし、彼のために骨折るのはまったく無駄なことだと言った。
二人はいっしょに小さな客間へ上がっていった。そこには食卓が用意されていた。彼とコリーヌとの食器があるばかりだった。仲間の人たちはどこへ行ったのかと、彼は尋ねないではいなかった。コリーヌは平気な身振りをした。
「知らないわ。」
「いっしょに食事をしないんですか。」
「ええちっとも。芝居で顔を合わせるだけでたくさんよ。……ほんとに、食卓でまでいっしょにいなけりゃならないとしたら!……」
それはドイツの習慣とはまるで異なっていた。彼は驚くとともに面白く思った。
「あなたたちは、」と彼は言った、「社交的な国民だと思っていたが。」
「そんなら、」と彼女は言った、「私は社交的でないんでしょうか。」
「社交的というのは、社会のうちに生活するということです。こちらでは、たがいに顔を合わせなければなりません。男も女も子供も、生まれた日から死ぬ日まで、それぞれ社会の一部をなしている。すべては社会のうちでなされる。人は社会とともに食ったり歌ったり考えたりする。社会が嚔《くしゃみ》をすれば、人もそれとともに嚔をする。一杯のビールを飲むのにも、社会とともに飲むんです。」
「それは面白いに違いないわ。」と彼女は言った。「同じ杯で飲んだらいいわ。」
「親密でしょう。」
「親密なんてそんな! 私は好きな人となら兄弟になってもいいし、そうでない人とはごめんだわ……。おう嫌《いや》だ、そんなのは、社会じゃなくて、蟻《あり》の巣よ。」
「僕もあなたに同意です。だからこちらで僕がどんな気持かわかるでしょう。」
「では私の国へいらっしゃいよ。」
それは彼の望むところだった。彼はパリーやフランス人のことについて尋ねた。彼女は種々聞かしてやった。それは完全に正確なものではなかった。南欧婦人の大袈裟《おおげさ》な自慢癖のうえに、相手を幻惑しようという本能的な欲求が加わっていた。彼女の言うところによれば、パリーではだれも皆自由だった。そしてパリーでは皆|怜悧《れいり》なので、各人が自由を利用し、一人としてそれを濫用する者がなかった。各自に好きなことをし、勝手に考え信じ愛し、もしくは愛しなかった。だれもそれに言い分はなかった。そこでは、他人の信仰に立ち入る者はいないし、他人の良心を探偵《たんてい》する者はいないし、
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