面がくり返されるところだった。彼が訪ねてゆくと、コリーヌは鏡を前にして、高い腰掛にすわり足をぶらぶらさしていた。鬘《かつら》をためしてるのだった。衣裳方と一人の床屋とがそばにいた。彼女は巻毛をも少し高くしたいといって、床屋に種々注文をしていた。そして鏡をのぞいてる時に、自分の背後で微笑《ほほえ》んでるクリストフを鏡の中に見出した。彼女は舌を出してみせた。床屋は鬘をもって出て行った。彼女は快活にクリストフの方をふり向いた。
「今日は。」と彼女は言った。
 彼女は彼に接吻《せっぷん》させるため片|頬《ほお》を差し出した。彼はそれほどの親密を期待していなかった。しかしその機会を無駄《むだ》にはしなかった。彼女の方では、その恩恵をなんとも思っていなかった。彼女にとっては、ただ普通の「今日は」と同じものだった。
「ああうれしいこと!」と彼女は言った。「今晩はうまくゆくわ。――(彼女は鬘のことを言ってるのだった。)――ほんとうに悲しかったのよ。今朝いらしったら、私は困りきってるところだったわ。」
 彼はその理由を尋ねた。
 それは、パリーの床屋が荷造りを間違えて、彼女の役割に適しない鬘を入れて来たからだった。
「平《ひら》べったくって、」と彼女は言った、「おかしな格好に毛がたれ下がってるんだもの。それを見た時私は、ほんとに、涙の限り泣いちゃったわ。ねえ、デジレさん。」
「はいって来ると、」とデジレは言った、「びっくりしたわ。顔の色がなくなって、死人のようになってたんですよ。」
 クリストフは笑った。コリーヌはそれを鏡の中で認めた。
「笑ってるのね、人の気も察しないで。」と彼女は怒《おこ》って言った。
 が彼女もまた笑いだした。
 彼は前夜の稽古《けいこ》の様子を尋ねた。
「すっかりうまくいったわ。」ただ一つ彼女は、他人の台辞《せりふ》はもっと削ってもらいたく、自分のは削らないようにしてほしいだけだった。……二人は楽しく話し合って、午後の一部はそれで過ぎてしまった。彼女はゆるゆると着物を着た。自分の服装についてクリストフの意見を聞くのを楽しんだ。クリストフは彼女の容姿をほめ、フランス語とドイツ語と折衷的な言葉を使って、彼女ほど「淫麗《いんれい》」な人を見たことはないと、率直に述べた。――彼女は最初まごついて彼をながめ、それから突然大声に笑いだした。
「私が何か言ったんですか。」と
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