衆や、拍手係や……。」
 クリストフは叫んでいた。
「いや、いや、いや!」
 しかし最後の言葉は彼を躍《おど》りたたした。
「拍手係だって、君は恥ずかしくないのか。」
「雇いのを言うんじゃないよ。――(実を言えば、雇人拍手係こそ、作品の価値を聴衆に示すために、なお見出された唯一の方法ではあるが。)――しかし、一種の拍手係が、適当に訓練された小さな仲間が、いつでも必要なんだ。どの作家も皆それをもっている。それでこそ友だち甲斐《がい》があるというものだ。」
「僕は友だちをほしくない。」
「それじゃ君の作は、口笛を吹かれるばかりだ。」
「僕は口笛を吹かれたいんだ。」
 マンハイムは愉快でたまらなくなった。
「そんな楽しみも長くはつづかないよ。だれも演奏してくれる者がなくなってしまうだろう。」
「なに構うもんか。それじゃ君は、僕が有名な人間になりたがってるとでも思ってるのか。……なるほど僕はこれまで、そういう目的に向かって全力を注いでいた。……まったく無意義だ、狂気|沙汰《ざた》だ、阿呆《あほう》の至りだ。……ちょうど、最も凡俗な高慢心の満足は、光栄の代価たるあらゆる種類の犠牲――不愉快、苦痛、不名誉、汚辱、卑劣、賤《いや》しい譲歩、などを償うものででもあるかのように! ところでもしそういう焦慮が今もなお僕の頭を悩ましてるとしたら、僕はむしろ悪魔にでもさらってゆかれたい。もうそんなことは少しも思っていないんだ。聴衆だの著名だのということには、少しも関《かか》わりたくないんだ。著名ということは、不名誉きわまる賤《いや》しいことだ。僕は一私人でありたいし、自分自身と愛する人々とのために生きたいんだ……。」
「それはそうだ。」とマンハイムは皮肉な様子で言った。「だが仕事は一つなくっちゃいけない。君はなぜ靴《くつ》でもこしらえないのか。」
「ああ僕がもし、他に類のないあのザックスのような靴屋だったら!」とクリストフは叫んだ。「どんなにか僕の生活は愉快に整ってゆくだろう! 一週のうち六日は靴屋をやる――日曜には、ただ親しい者だけで、自分の楽しみにまた数人の友人の楽しみに、音楽をやる。実にいい生活だろう!……馬鹿者どもの判断に供せられるというみごとな喜びのために、自分の時間と労力とをささげてしまうのは、愚の至りではないか。多くの阿呆どもに聞かれたりがやがや言われたり諛《へつら》われたり
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