、彼女は彼を――皆もそうだったが――いたわっていた。
ローザは、クリストフと話してる時に、親たちが眼を見合したり意味ありげな囁《ささや》きをかわしたりするのに気がついた。初め彼女はそれに気を留めなかった。それから気にかかって心ひかれた。彼らの言ってることが知りたくてたまらなかった。しかしあえて尋ねることもしかねた。
ある夕方彼女は、洗濯《せんたく》物をかわかすため木の間に張ってある綱を解くために、庭の腰掛に上っていたが、クリストフの肩につかまって地面に飛び降りようとした。ちょうどその時、彼女の眼は祖父と父との眼に出会った。彼らは家の壁に背中をつけて、パイプを吹かしながら腰掛けていた。彼らはたがいに眼配せをし合った。そしてユスツス・オイレルはフォーゲルに言った。
「似合いの夫婦になるだろう。」
ところが、娘が聞いてるのを認めたフォーゲルに肱《ひじ》でつっ突かれたので、彼はかなり遠くまで聞えるように大声で「へむ! へむ!」と言って、ごく巧みに――(と少なくとも彼は考えたが)――前の言葉をごまかしてしまった。クリストフは背を向けていたから、何にも気づかなかった。しかしローザは心が転倒し
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